ブレない映像のこれから #映像制作
映像制作を行っていると、ブレをどうするかという問題に直面します。 演出としてブレを活かすこともあれば、ブレのないスムーズな映像が求められることも。 ブレない映像が求められる場合、いろいろな手法が取られます。移動しながら撮影を行う場合には、レール式・タイヤ式のドリー/移動車であったり、電動ジンバルの使用でスムーズな映像を実現させます。 最近ではカメラ内手振れ補正機能(IBIS)を各メーカーが搭載しているため、その機能も非常に有用ですね。 さてここに来て、海外映像制作者 Brandon Li氏が自身のYoutubeにて非常に興味深い動画をアップしています。 SONY製カメラの映像のブレを抑える、新たな手法の紹介です。 まずはその動画をご覧ください。 https://youtu.be/jpkKfk-pOFE 内蔵ジャイロセンサーのデータによる後処理方式 動画の内容を簡単に説明しますと、ボディ内手ブレ補正機能に使用されているジャイロセンサーのデータを利用して、SONYのソフトウェア「CATALYST」で後処理を行いブレのない映像を実現させるとのこと。 SONY製カメラの映像データをCATALYSTで処理する でもそれってPremiere Pro や Final Cut Proなどでも出来るよね?という疑問。当然です。 動画内では、Final Cut ProのSMOOTHCAM機能を使用した場合との比較がなされていますが、その差は歴然です。 収録された動画ファイルに、先述のジャイロセンサーデータも含まれていると思われ、それをSONY製ソフトウェアであるCATALYSTだけが取り出して利用できるのだと思われます。 動画を見ていただけると分かりますが、手持ちの映像にも関わらず、非常にスムーズ!本当に驚きです。 他にもジンバルを併用した場合など、様々なテストが行われていて非常に興味深い内容です。 どうやって使うのか? 動画の解説によると、カメラ内手ブレ補正機能をオフにして収録する必要があります。それで最初はブレブレの映像が出来上がるわけですが、CATALYSTで補正をするとビックリ。最初から手振れ補正を使用した映像よりもスムーズな仕上がりになるわけです。 非常に簡単そうですね。 ただ、処理された映像はクロップされてしまいます。大幅にクロップされるわけではありませんが、フレームアウトすることを念頭に撮影することも求められそうです。 SONYのカメラならどれでもOKなのか 残念ながら、すべてのカメラでこの機能が使用できるわけではありません。 現在対応しているのは以下のカメラ(2020.9月現在) FX9α7sⅢZV-1RX0Ⅱ 対応機種は、その他にも広がる可能性もありますので要注目です。 また、SONY以外のメーカーもこの手法を取り入れてくることも考えられますね。 今後この機能はどうなっていくのか 本当に素晴らしい機能なので、さらに改良改善が重ねられていくことでしょう。よりスムーズさが向上することや、クロップ率を低下させることなどさらに使いやすくなることを期待したいですね。 そして、現在は映像を取り込んでPCで処理するという工程が撮影者に求められるわけですが、いずれはカメラ内で完結するようになるのではと考えます。いまのカメラサイズ内で熱問題や搭載CPUの処理速度など色々なことをクリアしなければならないと思いますが、技術者の皆さんには是非頑張っていただきたい! 撮影者のために機能向上を実現してくださっているメーカー・技術者の皆さんに、心より感謝と敬意を込めてこの記事を結びます。
MV ミュージックビデオ制作記
皆さんこんにちは、ビデオグラファーの橋本です。 以前に投稿しました、シンガーソングライター波多野菜央さんのMVを、どのように制作して行ったのか。今回はそのメイキングとでも言いましょうか。制作記録を簡単ではありますがお送りします。 WARNING!!我流であるところや稚拙な部分が多々あるかと思います。どうぞ優しい心と目でご覧ください。 1:キックオフミーティング まずは顔合わせで、今後の流れや全体のコンセプトを再確認し、方向性を固める音合わせを行いました。 もちろん電話やスカイプなどでのオンラインミーティングでも大丈夫なのですが、直接お会いできる環境にあるなら、やはり顔と顔を合わせて行うことがより一体感を感じることができると思っています。お互いの信頼関係を築く上でとても重要な第一歩ですね。 2:初期コンセプトの提案 次は曲をしっかりと聞き込み、イメージを膨らませていきます。 そして浮かんだ情景をラフスケッチにして、初期提案を行います。以下がそのラフスケッチです。 このコンセプトが受け入れられたなら、さらに歌詞ごとの雰囲気や感情などを文章でまとめます。それが以下の内容です。 何よりも大切な事だと思っているのは、クライアントが何を伝えたいのかということ。この場合は歌い手である波多野菜央さんがどんな感情・気持ちを届けたいのか。そのために何度も何度も曲を繰り返し聴き、その曲への愛着や理解度を深めていきます。 上記のプロセスに加えて、撮影スケジュール等も同時に詰めていくことになります。 3:ロケーションハンティング クライアントである波多野菜央さんは北九州を舞台に活動されています。それでロケーションも北九州の魅力が伝わるところを希望されていました。曲のイメージなどを考慮して、最終的に絞り込まれたのは北九州市若松区。 北九州全般に言えることですが、ノスタルジックな雰囲気を色濃く残す、とても素敵なところです。 そしてその中でも全国的に有名な「上野海運ビル」にロケ場所は決定!撮影許可は全てプロデューサー・コーディネーターの浅川さんが完璧に行ってくださり、撮影内容そのものの準備に集中する事ができました。本当にありがたい事です。 上野海運ビル:公式サイト ここまでが、プリプロダクションに当たる工程になるでしょうか。様々な提案が受け入れられ、コンセプトが固まり、撮影のスケジュールも決まり、いよいよ撮影がスタートします。 4:プロダクション - 撮影 絵コンテや様々なコンセプトは事前に固まっていますが、その場でアイディアが生まれることもあります。 全員で作り上げていくものですから、そうした意見もどんどん取り入れて行けば、作品はよりいっそう血が通うものだと感じています。それぞれが持つ知識・技術・情熱が相乗効果を産んで、より高いレベルへと作品を持ち上げいくんでしょうね。 今回の現場も、「全員で一緒に作り上げていく」そんな積極的な雰囲気が満ち溢れていたように思います。 さて今回の撮影で集中力を求められた点の一つは、リップシンクで高速撮影するということ。 ハイスピード撮影(FHD 120p収録)で通常の2倍近いスピードで曲を再生し、その速度に合わせて歌ってもらう、もしくは口パクしてもらう訳です。その後に編集段階でスローにすることで、映像はゆっくりなのに口の動きは曲とピッタリという事が可能になる典型的な手法。 撮影時に使用したのは、 iOSアプリの「Audipo」。 曲の再生スピードを細かく調整して流す事ができます。上記アプリで撮影する曲を高速再生し、歌ってもらいました。 波多野さんには事前にアプリをダウンロードしてもらい、指定の倍数の速さを確認してもらって、慣れてもらうことも重要なポイントだったかなと思います。結構早い速度でリップシンクする必要があるので、練習していないと難しいですね…。 しかしそこはしっかりと練習して、当日の撮影で全く問題なくこなしてくれた波多野さん。素晴らしかったです! 午前から夕方前までの撮影は、体感時間であっという間に過ぎていき、無事に終了。続いてはデータを取り込んで編集作業がはじまります。 5:ポストプロダクション−編集作業 良い素材を活かすも殺すも編集次第。撮影が無事に終わっても、編集作業というとても大切なプロセスが最後に残っています。 まずデータを取り込んで、バックアップを取ること。これが最初に行うことです。これでデータが消失でもしてしまった日には…。考えただけでも オ ソ ロ シ イ。 カメラ内の記録メディアにも完成するまでデータは残しておきます。保険は多い方が良いですものね。 データは本当に大事。記録メディアはちゃんとした物を買いましょう。変に安いのは海賊版だったり、信頼性を犠牲にしています。 撮影が終わっても、色々と気が抜けない訳ですが編集作業自体も苦じゃありません。 どちらかというと、熱が冷めないうちにすぐに編集するタイプです。次の日までにはラフカット版を見ていただけるようする事が多いと思います。 お客さんも早くチェックする事ができるし、もし方向性が違ったとしても早い段階で方向修正ができますから、どちらにとっても良いのかなと。 NOTEプリプロダクションまでの段階でしっかりと意見をすり合わせていれば、方向性の違いはほとんど生じません。事前の打ち合わせをどれだけ密に行えるかが、成功を左右します。 さて今回の編集のキモは、先述のリップシンクのスピード調整。事前に速度計算も行なっていましたので、どれくらいスローにするのか明確でしたから、編集もスムーズに進みます。 編集中のキャプチャ画像 幾らかの微調整は必要でしたが、無事に初期コンセプトに沿った作品に仕上がり、完成・納品! 打ち合わせ段階からはじめて、のべ3ヶ月。こちらがMV本編です。 https://www.youtube.com/watch?v=zeKd9IdEpDQ 波多野菜央さん公式ウェブサイト 最後に ご依頼いただいた波多野菜央さん、浅川三四郎さん。ご協力頂き本当に有難うございました。 そして結構長い記事になりましたが、最後まで読んでくださった皆さんにも感謝します。 毎回の制作では、心を込めて臨んでいます。 ご依頼下さる皆さんが伝えたいことに向き合い、それをしっかりと写真や映像で伝えるお手伝いをこれからもさせて頂ければ幸いです。 制作について問い合わせる