MV ミュージックビデオ制作記
皆さんこんにちは、ビデオグラファーの橋本です。
以前に投稿しました、シンガーソングライター波多野菜央さんのMVを、どのように制作して行ったのか。今回はそのメイキングとでも言いましょうか。制作記録を簡単ではありますがお送りします。
WARNING!!
我流であるところや稚拙な部分が多々あるかと思います。どうぞ優しい心と目でご覧ください。
1:キックオフミーティング
まずは顔合わせで、今後の流れや全体のコンセプトを再確認し、方向性を固める音合わせを行いました。
もちろん電話やスカイプなどでのオンラインミーティングでも大丈夫なのですが、直接お会いできる環境にあるなら、やはり顔と顔を合わせて行うことがより一体感を感じることができると思っています。お互いの信頼関係を築く上でとても重要な第一歩ですね。
2:初期コンセプトの提案
次は曲をしっかりと聞き込み、イメージを膨らませていきます。
そして浮かんだ情景をラフスケッチにして、初期提案を行います。
以下がそのラフスケッチです。
このコンセプトが受け入れられたなら、さらに歌詞ごとの雰囲気や感情などを文章でまとめます。それが以下の内容です。
何よりも大切な事だと思っているのは、クライアントが何を伝えたいのかということ。
この場合は歌い手である波多野菜央さんがどんな感情・気持ちを届けたいのか。そのために何度も何度も曲を繰り返し聴き、その曲への愛着や理解度を深めていきます。
上記のプロセスに加えて、撮影スケジュール等も同時に詰めていくことになります。
3:ロケーションハンティング
クライアントである波多野菜央さんは北九州を舞台に活動されています。それでロケーションも北九州の魅力が伝わるところを希望されていました。曲のイメージなどを考慮して、最終的に絞り込まれたのは北九州市若松区。
北九州全般に言えることですが、ノスタルジックな雰囲気を色濃く残す、とても素敵なところです。
そしてその中でも全国的に有名な「上野海運ビル」にロケ場所は決定!
撮影許可は全てプロデューサー・コーディネーターの浅川さんが完璧に行ってくださり、撮影内容そのものの準備に集中する事ができました。本当にありがたい事です。
ここまでが、プリプロダクションに当たる工程になるでしょうか。様々な提案が受け入れられ、コンセプトが固まり、撮影のスケジュールも決まり、いよいよ撮影がスタートします。
4:プロダクション – 撮影
絵コンテや様々なコンセプトは事前に固まっていますが、その場でアイディアが生まれることもあります。
全員で作り上げていくものですから、そうした意見もどんどん取り入れて行けば、作品はよりいっそう血が通うものだと感じています。
それぞれが持つ知識・技術・情熱が相乗効果を産んで、より高いレベルへと作品を持ち上げいくんでしょうね。
今回の現場も、「全員で一緒に作り上げていく」そんな積極的な雰囲気が満ち溢れていたように思います。
さて今回の撮影で集中力を求められた点の一つは、リップシンクで高速撮影するということ。
ハイスピード撮影(FHD 120p収録)で通常の2倍近いスピードで曲を再生し、その速度に合わせて歌ってもらう、もしくは口パクしてもらう訳です。
その後に編集段階でスローにすることで、映像はゆっくりなのに口の動きは曲とピッタリという事が可能になる典型的な手法。
撮影時に使用したのは、 iOSアプリの「Audipo」。
曲の再生スピードを細かく調整して流す事ができます。上記アプリで撮影する曲を高速再生し、歌ってもらいました。
波多野さんには事前にアプリをダウンロードしてもらい、指定の倍数の速さを確認してもらって、慣れてもらうことも重要なポイントだったかなと思います。結構早い速度でリップシンクする必要があるので、練習していないと難しいですね…。
しかしそこはしっかりと練習して、当日の撮影で全く問題なくこなしてくれた波多野さん。素晴らしかったです!
午前から夕方前までの撮影は、体感時間であっという間に過ぎていき、無事に終了。続いてはデータを取り込んで編集作業がはじまります。
5:ポストプロダクション−編集作業
良い素材を活かすも殺すも編集次第。撮影が無事に終わっても、編集作業というとても大切なプロセスが最後に残っています。
まずデータを取り込んで、バックアップを取ること。これが最初に行うことです。これでデータが消失でもしてしまった日には…。
考えただけでも オ ソ ロ シ イ。
カメラ内の記録メディアにも完成するまでデータは残しておきます。保険は多い方が良いですものね。
撮影が終わっても、色々と気が抜けない訳ですが編集作業自体も苦じゃありません。
どちらかというと、熱が冷めないうちにすぐに編集するタイプです。次の日までにはラフカット版を見ていただけるようする事が多いと思います。
お客さんも早くチェックする事ができるし、もし方向性が違ったとしても早い段階で方向修正ができますから、どちらにとっても良いのかなと。
NOTE
プリプロダクションまでの段階でしっかりと意見をすり合わせていれば、方向性の違いはほとんど生じません。
事前の打ち合わせをどれだけ密に行えるかが、成功を左右します。
さて今回の編集のキモは、先述のリップシンクのスピード調整。事前に速度計算も行なっていましたので、どれくらいスローにするのか明確でしたから、編集もスムーズに進みます。
幾らかの微調整は必要でしたが、無事に初期コンセプトに沿った作品に仕上がり、完成・納品!
打ち合わせ段階からはじめて、のべ3ヶ月。こちらがMV本編です。
最後に
ご依頼いただいた波多野菜央さん、浅川三四郎さん。ご協力頂き本当に有難うございました。
そして結構長い記事になりましたが、最後まで読んでくださった皆さんにも感謝します。
毎回の制作では、心を込めて臨んでいます。
ご依頼下さる皆さんが伝えたいことに向き合い、それをしっかりと写真や映像で伝えるお手伝いをこれからもさせて頂ければ幸いです。